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2015/12/08

世界有数の金融イベントSibos(サイボス)2015参加レポート

製造業系システムインテグレータ―である当社は、FinTechを業種の境界を越えたテクノロジートレンドと捉え、製造業分野で培った技術等を活用し、金融事業に展開する事で新たなソリューションを創出することを考えています。

FinTechを破壊的イノベーションたらしめる「テクノロジー」として、また、FinTechが提供する「新たな価値」に注目しています。

今回は、毎年世界各国の金融機関のトップやシステム関係者が一堂に会するSWIFT International Banking Operations Seminar(Sibos)より、FinTechの動きを中心とした金融業界の世界的トレンドをレポートします。

NS Solutions は、2015年10月12日から15日にかけてシンガポールで開催された SIBOS 2015 の第1日目、及び第2日目に参加し、FinTech の動きを中心とした金融業界のグローバルトレンドや、Transaction Banking の最新動向について情報収集を行った。

前者では、従来の銀行が担ってきた役割の一部を、FinTechを活用したスタートアップや非金融機関が代替するトレンドが再確認された。従来の金融ビジネス・プラットフォームの崩壊が起きつつある中で、こうしたトレンドに対して銀行が取るべき選択は、対抗か協調か黙認か、そして今後の銀行が果たすべき役割とは何かといったテーマについて問題提起がなされた。

後者では、昨年に引き続きTransaction Bankingが金融ビジネスの成長領域であると確認された。今後も拡大が予測される世界の貿易取引 ― その中でもエマージングマーケット(東南アジア、中南米、東欧、ロシア等)における貿易取引ボリュームの拡大が顕著であり、この地域でのSME(Small Medium Enterprise:中小企業)向け金融サービスが成長ドライバーであると示された。また、企業のグローバル財務の成長とニーズに合わせてTransaction Bankingサービスを提供することの重要性が再確認され、企業財務システムとTransaction Bankingサービスの融合による金融サプライチェーンファイナンスの電子化促進の重要性が発信された。

尾上 皓紀さん

(レポーター)
金融ソリューション事業本部
営業本部 営業第四部
尾上 皓紀さん

FinTechの最新動向

INNOTRIBEにおけるFinTechの最新動向

INNOTRIBEとは

INNOTRIBEは、SWIFTが主催するFinTechの祭典であり、FinTechスタートアップとSIBOS参加者とのネットワーキングの場や、最新のFinTech事情に関する情報発信の場を提供している。今年は、2009年のSIBOS 香港 で初開催されて以降 7年目の開催であり、FinTechのグローバルな成長と発展に世界で最も貢献しているイベントのうちの1つである。

今年のINNOTRIBEでは、スタートアップの紹介及びコンテスト 【 The Startup Challenge 】と、FinTechが引き起こす金融業界のイノベーションについての講演【 the Future of Money session 他】を2大イベントとして行われた。The Startup Challengeでは、ロンドン、ケープタウン、シンガポール、ニューヨークの4会場における予選の結果、370社以上の応募スタートアップから選出された20社が、ブース展示や製品デモによって、最も優れたスタートアップの座及び賞金の50,000 USDを競い合った。講演では、[platforms][society][innovation][machine] の4テーマにてセッションが行われた。いずれのセッションも満席かつ立見の人々で溢れており、世界の金融機関及びITベンダーのFinTechへの関心の高さが伺えた。

会場の様子

会場の様子

INNOTRIBEにおけるFinTechソリューションの傾向

今年のThe Startup Challengeに応募したFinTechソリューションについて、そのアイデアに含まれるキーワードを分類し、各キーワード毎の応募数及び関連を分析した資料には、Lending - Big Data - New banks - Payments を組み合わせた FinTech ソリューションの開発が、主要なトレンドである旨が記載されていた。

詳細は以降の項で記載するが、INNOTRIBEの講演セッションにおいても、従来金融機関が利用してこなかった個人のビッグデータを活用して信用判断及び貸金を行ったり、銀行口座を持たずとも決済が可能なプラットフォームを提供したりする FinTechの紹介が目立っていた。

なお、今年のThe Startup Challenge で優勝を勝ち取ったのは、金融機関向けの分散レジャーを提供するHyper社であった。Hyper社は、様々な金融サービス(シンジケートローン、レポ、FX、有価証券、国際送金、etc)について、仲介機関を経由せずに、低コストかつ低リスクなリアルタイムでの清算、決済が可能な仕組みを提供しているとのことだ。Hyper社を除く The Startup Challengeのファイナリスト19社の製品・サービス概要については、本稿末尾の一覧をご参照いただきたい。

FinTechの動きを中心とした金融業界のグローバルトレンド

本項では、【 Future of Money: A burning platform? 】を中心としたINNOTRIBE講演セッションをもとに、金融ビジネス・プラットフォームの変化に関するグローバルトレンドの概要を記述する。

非金融機関に代替されゆく金融業務

従来の銀行が担ってきたマーケットでありつつも、彼らが取り組まなかった(取り組めなかった)部分に着目したFinTech及び非金融機関の存在感が、年々と強まってきている。彼らは、BlockChainやモバイル及びビッグデータを活用することで、より安く早く便利な、口座、決済手段、ローン等を提供しはじめており、従来銀行の収入源である様々な金融サービスが、これらに取って代わられる可能性 ― 金融プラットフォームの崩壊の可能性が危惧されている。

個人向けナノローンと新たなスコアリング手法

従来、銀行の個人向けローンと言えば、借り手の所得や担保の状況、過去の取引実績や信用情報等の確認を通じ、十分信用に足る借り手に対して、まとまった規模のローン組成を目指すものであった。

一方、FinTechは、全く新しいデータ及びスコアリングロジックによって、プロセスの自動化とスピードアップ及びコスト削減を実現する手法を提唱している。彼らは、こうした手法によって、より広い顧客層に対する、より広いファイナンスニーズを捉えることが出来るという。

例えば、MODE社は、ユーザのモバイル利用履歴から所有者の特性を自動で分析し、5から50ドル程度の"ナノ"ローンを提供している。通常の銀行によるファイナンスサービスを利用できない人々から多く支持を集める一方、そのデフォルト率も1% 未満とのことだ。また、同様にモバイルを利用したスコアリングロジックを提案するのは、Cignifi社である。彼らはユーザの通話履歴とデフォルトとの相関を調べ、例えば「毎日夜中の2時に電話する人はデフォルトしやすい」といったロジックでスコアリングを行い、モバイルで即時審査を行う仕組みを構築した。

これらは、従来の銀行で「信用判断に足る十分な情報がなければ貸し出せない」として、一様に取り扱われていた借り手から、出来る限り多くの情報を拾い、全く新しい切り口で、少しでもリスクの低い借り手を見極めようとする新たな試みであるが、既存銀行による見解は手厳しい。

例えば、Future of Money セッションで以下の一幕があった。本セッションは、パネラーが会場の前方と後方に分かれており、前方にはFinTechスタートアップが、後方には Standard Chartered、DBS、 Wells Fargoといった大銀行が並び、討論する構図となっていた。上述のスコアリング手法についても、大銀行は「お金を貸すだけなら誰でも簡単だ。実務では、泥臭く貸金を回収することこそが大変で、ITの分析だけで成立する仕事ではない。」と攻撃的に主張する。一方で、FinTechは「貸し倒れに対しては、ローン債権をバルクで証券化して捌くことでリスクヘッジしている。」と反撃、白熱した議論が展開された。

正しいのは FinTechか既存銀行か ― こうしたソリューションが、貸し手としての銀行の立場を脅かすものに成長していくのか、ローン市場の今後の動向が注視される。

プラットフォーム崩壊の中心地としての中国

金融プラットフォームの変革は、どこから始まるのか ― その中心地として中国の名前が挙がった。

既存ビジネスの上に成り立つ銀行にとって、最も脅威となる外敵は、Amazon、Apple、Googleではなく、中国のBATs(Baidu, Alibaba, and Tencent)とのことだ。

BATsは、それぞれ、検索 / EC / SNSを中心とした巨大インターネットサービス企業だが、各々が決済やその他金融サービスへ事業を拡げることで、交通、物流、チケット手配、宅配、などあらゆるサービスの統合的提供を目指している。既にAlibabaのモバイル決済サービスであるAlipayは、中国での全モバイル決済の80% 近いシェアを獲得している他、3社とも銀行免許を取得した。彼らは、保有する大規模なインターネット及びモバイルの顧客基盤やIT基盤、及び、それらから生じるビッグデータ(閲覧履歴、購買履歴、口コミ、口座情報、決済情報、etc)を高度に活用することで、今後革新的なデジタルバンキングサービスを開発すると期待されている。

また、中国自体が、デジタルバンキングを育むのに適した環境だとの見方もある。中国の人々は金融に関するモバイル活用に積極的で、既にタクシーの支払いではモバイル決済が一般的になってきている。さらに、強力なネット検閲(Great Firewall)に守られることで、中国のサービス提供企業は、グローバルな競争を回避し、安定した収益の確保や投資による規模拡大が見込めるからである。

既存の銀行が取るべき対応とは

以上のように、既存の金融プラットフォームを革新し得るFinTech関連企業に対して、既存銀行はどのような対応をしていくべきだろうか。各行で様々な議論があって然るべきだが、INNOTRIBEとしての見解は「協調」であった。INNOTRIBEは、以下のフレームワークを提案し、FinTechスタートアップとのネットワーキングを呼び掛けた。

Identify ⇒ Talk ⇒ Listen ⇒ Learn ⇒ Invest ⇒ POC

銀行が、自ら単独では成し難い新規のサービスについて、鋭い視点と技術を有するFinTechと協調して取り組むことで、よりよい金融サービスが生まれていくことを願いつつ、今後のFinTech及び金融業界の動向を注視していきたい。

Transaction Bankingのトレンド

Transaction Banking マーケットの概況

Transaction Bankingビジネスは、顧客との強固な関係とクロスセルを構築するために、銀行にとってますます重要なビジネスとなっている。

2014年におけるTransaction Bankingの収益(売上げ)はグローバルの銀行全体で約330億ドル、この中で決済口座をベースとした資金決済による収益は243億ドルであり、これは2024年に約2倍の480億ドル(年平均成長率7%)に達すると予測されている。こうした傾向を特に牽引するのは、エマージングマーケットにおけるSME(Small Medium Enterprise)向けのサービス提供である。

また、2014年におけるTrade Financeの収益(売上げ)は、グローバルの銀行全体で約45億ドルであり、2024年には100億ドル(年平均成長率8%)に達すると予測されている。企業貿易の決済手法はここ数年来、L/Cを代表とする伝統的なドキュメンタリートレードからOpen Account取引へシフトしているが、ドキュメンタリートレードに関しても、エマージングマーケットを中心に引き続き主要なTrade Financeサービスとして取引ボリュームは拡大する。

このように、Transaction Bankingの市場は引き続き拡大すると予測される一方で、ノンバンクの市場参入により市場の競争環境は厳しく変化している。グローバル企業の財務部門とノンバンクとの取引は徐々に増加しており、これらノンバンクによるサービス領域が、銀行にとって収益性の高い、サプライチェーンファイナンス、外国為替、海外送金分野であるためだ。グローバルの銀行にとっては、Transaction Bankingサービスにおける、より一層の差別化と顧客関係強化が課題となっている。

グローバル企業財務部門のTransaction Bankingサービスに対するニーズ

グローバル大企業や多国籍企業のCFO及び財務部門は、運転資金最適化(Working Capital Management)やバランスシート健全化を重要なミッションと位置付けており、取引先銀行に対して、企業のグローバルサプライチェーンを支援する運転資金調達やオフバランスシートファイナンス、キャッシュ最適化に関するソリューションを求めている。

また、財務部門においては、業務STP化、事務効率化、管理業務自動化が望まれており、Transaction Bankingサービスを提供する取引先銀行にその支援を求めている。例えば、資金集中管理と効率的な資金決済を実現するCMSの導入、電子インボイスの利用などを通じた金融サプライチェーンの電子化などである。

Transaction Bankingサービスの提供銀行は、単一エントリポイントとしてリレーションシップマネージャーを配置し、資金決済、貿易金融、サプライチェーンファイナンス、外国為替を含めた、顧客への統合的なサービス提供を行う必要がある。

法人向けインターネットバンキングに対するニーズ

高度な財務システムを持たないSMEでは、主要取引銀行のインターネットバンキングで、各取引銀行との口座残高、Open Account取引等のトランザクションを横断的に統合管理(参照)できることが主なニーズであり、SME向けのインターネットバンキングには、こうした統合管理機能と、顧客ニーズに沿って継続的に改善が出来るような拡張性が求められている。

一方で、高度な財務システムを自前で構築しているようなグローバル企業では、銀行に対して、上記のようなグローバル拠点の統合管理機能だけではなく、自社財務システムとインターネットバンキングをシステム連携することで実現される、より高度なTransaction Bankingサービスを求めている。彼らは、Transaction Bankingサービスの取引金融機関を選定する際、自社財務システムとの連携に関するRFPを銀行に配布し、データ連携手段の提案を銀行へ求めるケースもある。そのため、グローバル企業向けのインターネットバンキングでは、企業の個別システム要求に対応出来る拡張性 ― 特に、送受信データフォーマットの業界標準化(XML、ISO20022、SWIFT、SEPA等)や、システムインフラのオープン・アーキテクチャーへの移行を見据えたシステム構築が必要となっている。

以上

【 ご参考 】The Startup Challenge ファイナリスト

各社製品・サービスの詳細については、各社web等を参照されたい。

■Codapay
東南アジアでクレジットカードを保有していない人々のうち、97%もの人々が利用可能な支払代替手段を、企業向けに提供。

■Elliptic
BlockChainを利用して、安全に透明性高く、様々な金融資産の管理を行えるサービスを提供。

■goSwiff
オンラインや店頭問わず利用可能で様々なデジタル決済を一元的に集約するモバイル決済プラットフォームを提供。主にエマージングマーケットに力点をおいている。

■Green Model
ビッグデータや人工知能を活用して、経営の意思決定に役立つレポートを、時間や手間をかけずに作成できる仕組みを提供。リアルタイムで正確なデータにより、経営判断の質を高めようとする。

■Payfirma
主にスモールビジネス向けの決済プラットフォームを提供。スマホ、タブレット、PCに差し込めるクレジットカードリーダーを用いて手軽な決済を支援。

■Pendo Systems
金融機関の規制対応やリスク管理の高度化を支援するため、何百にも渡るシステムに散在するデータ及びそれらの関連性を特定し、単一で検索しやすいビューを作成するソリューションを提供。

■PICSA
アフリカにおける低所得者の経済状況改善を目標に活動。雇用者に対し、従業員向けの負債整理、貯蓄管理、ローン等のソリューションを、パートナー企業と連携しながらアレンジ。

■xWare42
銀行、小売業者、消費者等が利用可能な、購買取引状況の可視化プラットフォームを提供。消費者が、取引状況をオンラインで把握出来るようになることで、銀行や小売業者との認識不一致や問合せ件数を減らす。また消費者に対する個別割引の企画などCRMの高度化への活用も可能。

■Bitspark
Blockchainを用いた送金プラットフォームであり、webを通じて、早く安く、専門知識の必要なしに、あらゆる国へ送金が可能な仕組みを提供。

■Iwiafrica
企業に対し、顧客向けのモバイル決済プラットフォームを提供。口座はなくともモバイルを所有している、発展途上国の利用者に着目。

■Jewel Paymentech
銀行や電子決済業者向けにリスク管理ソリューションを提供。機械学習を使用した高度なリスクスコアリングにより、自社のプラットフォームを利用する顧客やデータセキュリティを管理し、違法取引に利用されるのを防ぐ。

■Notafy
金融機関が顧客への通知に利用するインスタントメッセージ送信サービスを提供。(通常は、モバイルSMSが利用されていることが多い。)送信数ではなく、読まれた回数に応じて費用が掛かる仕組みで、金融機関のメッセージ送信コストの削減に貢献。

■Pariti
貯蓄を持たず負債を抱え、経済的なストレスのために苦しい人生を歩む人々を救うことを目的とした、金銭管理アプリを提供。口座情報や決済情報をもとにユーザの出費状況を分析し、お金の使い方を提案するなど、利用者が経済的に余裕ある生活を取り戻す支援をする。

■Revolut
モバイルのボタン一つで、インターバンクレートでの両替や、ソーシャルネットワークを通じた送金等が可能なサービスを提供。決済に関して、通常の銀行サービスで課せられるあらゆる手数料から利用者を解放する。

■Sedicii
デジタルサービス利用時に必要な認証プロセスにおいて、個人情報を晒すことなく利用者の本人立証を可能にすることで、プライバシーが侵害されるリスクを軽減するサービスを提供。単一のパスワード(または生体認証)とモバイルのみで認証を可能にする。

■SizeUp
ビッグデータを用いて通常なら大企業しか入手し得ない優れた市場調査結果を、誰にでも見やすいレポートとして提供するサービス。銀行は本サービスを自行中小企業顧客に提供することで、顧客の環境分析や営業戦略策定等を支援し、彼らの成功と成長をサポートすることができる。

■Token
デジタル時代に適応した、安く早く信頼性の高い国際送金を可能にするプラットフォームを提供。

■Trusting Social
ソーシャル・モバイルネットワーク上のビッグデータとディープラーニングを組み合わせたクレジットスコアリングサービス。従来のやり方では「信用力が判断できない」とされてきたエマージングマーケット内25億人の信用評価が可能。

■Yue Diligence
起業家や投資家向けにデューデリジェンスの効率化を支援。

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