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2017/02/24

世界初、HoloLensで自走するPepper ANA x NSSOL空港業務における人とロボットのコラボレーション検証を開始

左より
ANAシステムズ株式会社 IT企画部 技術革新チーム マネージャー 和田 正太郎様
全日本空輸株式会社 デジタル・デザイン・ラボ エバンジェリスト 野村 泰一様
NSSOL 笹尾和宏統括研究員(HoloLens関連AP開発担当)
NSSOL 古田裕介研究員(Pepper関連AP開発担当)
NSSOL 河野博之エキスパート(担当営業)

2月15日に人型ロボット「Pepper(ペッパー)」の自走による宮崎ブーゲンビリア空港案内の実現に向けた検証開始について、全日本空輸株式会社(ANA)様と新日鉄住金ソリューションズ(NSSOL)共同での記者向け発表会を実施しました。今回、この検証プロジェクトに携わっているANA様と当社メンバーにお話しをうかがいました。

今回のPepperの自走実験について特徴的な点はどんなところでしょうか?

野村様:Wi-Fiやビーコンを使わずにPepperを自走させることですね。現時点では世界的にみても大変珍しいといえます。今回の実験はNSSOLさんの技術協力を得たことで実現にこぎつけることができました。

今回のNSSOLとの共同検証はどのようなきっかけで始まったのでしょうか?

野村様:これまでも福岡空港や成田空港など、空港内の決まった場所でPepperに案内させるといった取り組みはありました。私が所属するデジタル・デザイン・ラボは、新たなテクノロジーやビジネスモデルを推進している部門なのですが、NSSOLさんのシステム研究開発センター(以下、シス研)でのPepperを自走させる技術検証の取り組みをWebで拝見して「これだ!」と思いました。
それまで私自身はNSSOLさんとの接点はなかったのですが、別部門がシステム開発でお世話になっているのを聞き、すぐにコンタクトを取らせていただきました。

河野さん:ANA様の"攻めのIT"を推進されている野村様のお名前はよくお聞きしていましたが、それまで面識なく、昨年(2016年)の秋ごろに突然ご連絡を頂いたので正直びっくりしました。
お話しをうかがっていくなかで、これまでの当社ビジネスの枠にはおさまりきらないと感じながらも、お客様との価値共創につながるお話であり積極的に推進いたしました。

古田さん:シス研で行ったPepperの自律走行の技術検証が、ANA様に関心をもっていただけたことはとてもうれしかったですね。ただ、これまで行っていた自律走行の仕組みではPCやセンサをPepperに取り付ける必要があり運用に手間がかかってしまうという課題や、空港のような広い空間では自己位置を認識することが難しいという課題がありました。

シス研の活動はこちらをご覧ください。:
人とロボットが一緒に働くオフィスを考える。NSSOL Pepper部、始動!

笹尾さん:「よりスマートなPepperの自走」という野村様からのご要望を受け、入手可能なデバイスや技術でどうしたら実現できるか、さまざまな方法を検討し最終的にたどり着いたのが2017年1月18日から国内販売が開始されたマイクロソフト社のHoloLensでした。HoloLensの持つ高度な空間認識機能を利用してPepperをナビゲーションするという組み合わせにチャレンジしたのです。

記者団に囲まれて

2017年1月に販売開始された製品を、1ヶ月足らずで実装できたのはなぜですか?

笹尾さん:じつはANA様からのご相談よりも前に、シス研ではHoloLensの国内販売にさきがけて、米国で販売されたHoloLensを昨年入手しており製品検証をいち早く行っていました。通常は無線通信を行う国内販売前の製品は、国内での無線利用の認証を受けていないため使用できないのですが、シス研にはこのような機器でも国内の電波法に準拠して試験できる設備があるため、検証作業を進めることが出来たのです。シス研では研究所の発足当時から海外の新しい技術、製品をいち早く技術検証し、お客様に実際にご提案できるものかどうかといった検証を進めています。

検証に必要とされたコアな技術とはなんでしょうか?

笹尾さん:それは最近よくニュースでも話題になるAR(拡張現実感)の技術です。HoloLensはゴーグルのような形状のARヘッドセットで、Windows10を搭載した新しいホログラフィックコンピュータです。PepperはHoloLensの画面を見ているわけではなく、HoloLensからの誘導情報をもとに移動しているのですが、これにはARの要素技術である位置把握技術を応用しています。また今回は、Pepperの移動経路を事前に登録する必要があったのですが、移動経路の設定にAR技術を利用することでより直感的に現場環境に即した経路が設定できるようになりました。じつはシス研では2008年からAR技術の様々な技術検証をしており、2011年にはARメガネのメーカーであるVuzix社と共同開発をしたスマートグラスがCES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)で賞を頂いた実績もあります。こういった積み重ねが、今回のAR技術を利用した検証にも役に立っていると思います。

古田さんがこれまで取り組んできた研究成果も短期間でできた理由ですか?

古田さん:もちろん、コンセプトや考え方は流用できたので短工期開発には貢献できていると思います。ただ、デバイスをHoloLensにしたことによって、自律走行のアプリケーション開発は1からの作業となりました。HoloLens自体が新しいデバイスであり、さらにPepperとの組み合わせはおそらく初めての試みのため参考にできる情報が少なく、技術的な課題を解決するのに苦労しました。

野村様:PepperとHoloLens。この組合せが見た目にも強烈なインパクトがありますし、未来を感じさせます。ソフトバンクやマイクロソフトの方々も、「こんな使い方は全く想定していなかった」と言って驚いていましたよ。NSSOLさんがいたからこそ、今回実現できた組合せだと思います。

HoloLensをかけたPepper

自走の仕組みにHoloLensを使用することのメリットはなんでしょうか?

野村様:施設内に位置情報を伝えるビーコンなどの機器を配備する必要がないため、既存の施設環境のままで自走できることが最も大きなメリットです。
従来の技術でロボットを屋内に移動させようと思うと、位置情報把握の手段としてはWi-Fiやビーコンを用いるのが一般的ですが、いずれの技術も建物の中に通信機器を配備しなくてはいけません。空港のような共用施設においては、調整に時間がかかったりすることがあります。
HoloLensを使ったマップ認識は、このような通信機器の配備を建物側に施すことなく実施でき、さらに移動のたびにマップ情報を最新のものに更新できます。

現時点でPepperができる空港業務とはどのようなものでしょうか?

和田様:記者向け説明会でデモンストレーションしたお預かり手荷物、チェックイン関連および搭乗前ゲートでの案内業務があります。
例えばチェックインカウンター前での案内業務では、Pepperに近づくとお客様の目的地を尋ね胸のディスプレイで目的地、搭乗する便をお客様が選択すると、搭乗口への経路を表示してご案内します。また、手荷物カウンター前の場所案内や、口が開いている荷物はお預かりできないためテープを使い閉じる必要があることなどを日本語と英語で説明します。
搭乗前の案内では、ゲート通過に必要なもの、事前改札などの案内、搭乗が始まると、「お待たせしました。皆さんを飛行機にご案内しますね。前の人を追い越してしまわないように、ゆっくりご搭乗くださいね」と発話します。

今後の機能追加などのお考えはありますか?

和田様:今後検証を進めていくなかでさらなる多言語化や会話メニューの追加など、現場での検証に関わる方々のご要望をふまえて検討していきたいと思っています。

野村様:今回の実験でPepperが自走して業務ができることが証明されれば、ロボットの適用業務の幅が広がると考えています。移動地点を組み合わせることで、エリアを巡回したり、多言語案内するサービスの実現が現実味を増してくると考えています。

記者団のインタビューを受ける野村様

ロボットの活用につき今後の将来イメージを教えてください。

野村様:これまでの2空港での導入では、繰り返しお客様にお伝えしなければならない情報はPepperが代替し、お客様一人一人に個別に対応すべきことを人間が行なう、人とロボットが互いにフォローし合えるよい関係を築けた実績があります。よく巷で言われるようなロボットが人間の仕事を奪うということではなく、人とロボットとのコラボレーションという形で、ANAらしいホスピタリティをお客様にご提供していきたいと考えています。

そうした御社のビジョンにNSSOLの技術が貢献できることはとても誇らしく思います。

野村様:今回のようなチャレンジはANA単独ではできなかったことで、NSSOLさんには本当に感謝しています。逆にANAとのパートナーシップによりNSSOLさんの技術がマーケットに訴求されたので、双方にとって好ましいコラボレーションではなかったかと思います。
デジタル・デザイン・ラボはこれからも様々なチャンレンジを続けていきますので、引き続きよろしくお願いします。

こちらこそよろしくお願いします。本日はありがとうございました。

※注:当社のPepper部の取り組みは、ソフトバンクロボティクスのPepperを活用し、NSSOLが独自に実施しているものです。

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